院長ブログ

2013.05.29更新

先週のブログで、日本糖尿病学会が血糖管理の基準を改定した事をお伝えしましたが、その伏線となったのは昨年2月の「アメリカ糖尿病学会とヨーロッパ糖尿病学会の糖尿病治療に関する共同声明」です。
これを改めて読み返してみて、糖尿病治療の潮流に大きな変化が起きていることを確信しました。

この声明では、患者さんの病状や背景に応じて、治療を個別化すること(いわゆるオーダーメイド治療)が必要であることが強調されています。そのために厳格な管理を選択するか、緩い管理を選択するか?の判断基準が以下のように明確に示されています。

1.患者さんの治療に対する意欲が高ければ厳格に、低ければ緩やかに
2.低血糖などの副作用のリスクが大きければ緩やかに、小さければ厳格に
3.糖尿病と診断されたばかりなら厳格に、診断後長い時間が経過していれば緩やかに
4.予想される余命が長ければ厳格に、短ければ緩やかに
5.重大な合併症が少なければ厳格に、多ければ緩やかに
6.社会的支援に恵まれていれば厳格に、乏しければ緩やかに

そして、患者さんを社会的な存在と考えて、患者さんの好みや価値観、認容制を慎重に検討し、患者さんと一緒に治療方針を決定していくという患者さん中心のアプローチが提唱されています。

これが実践できれば、健康長寿につながる患者満足度の高い糖尿病治療が可能になると思います。

投稿者: 小早川医院

2013.05.27更新

現代の急激な環境の変化、食生活の変化に対して、私たちの腸や腸内細菌は必ずしもうまく適応できているとは言えません。
そうしたことを背景として、最近では腸に関する様々な研究が行われるようになりました。
腸内細菌と疾病の関連についての最新の報告を、いくつかご紹介します。

1.炎症性腸疾患
胃がんや胃・十二指腸潰瘍の原因がピロリ菌であることは有名ですが、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患も腸内細菌による感染症である可能性が研究者により明らかにされ、現在、その原因菌がつきとめられつつあります。

2.肥満
肥満者の腸内細菌叢は独特であると言われています。高脂肪・高糖質食の摂取が原因となり、肥満者特有の腸内細菌叢を形成し、肝臓や骨格筋での脂肪合成が促進され、食欲亢進、インスリン抵抗性の上昇などの影響を与えていると考えられています。

3.アレルギー疾患
アレルギー児と健康児の腸内細菌叢を比較したところ、アレルギー児の腸内細菌の種類や量が健康児と大きく異なることが示されました。それ以降、腸内細菌とアレルギー疾患の関連性に注目が集まり、乳酸菌摂取によるアトピー性皮膚炎の発症予防効果も期待されています。

4.1型糖尿病
腸内細菌叢が悪化することで、本来腸の粘膜から毛細血管の中に取り込まれることのないような食品中のタンパク質が抗原になってしまうことがあります。抗原の侵入によって自己免疫疾患が引き起こされることにより、インスリンを作り出すすい臓が炎症を起こし、1型糖尿病になるとの仮説がたてられています。

5.アルコール性脂肪性肝炎・非アルコール性脂肪性肝炎
アルコール性脂肪性肝炎はアルコールによって腸管の粘膜の透過性が増し、腸内細菌が血液の流れにのって他の臓器へ移行したり、腸内細菌のもつ毒素が肝臓に入り込むことが原因の一つであると言われています。
一方、非アルコール性脂肪性肝炎は、肥満により腸内細菌叢のバランスが崩れ、異常に増加した腸内細菌の毒素が肝臓における糖や脂肪の代謝を乱すことにによって発症すると考えられています。
どちらも乳酸菌やラクトフェリンなどのサプリメントを用いて腸内細菌叢を正常化することにより改善することがわかっています。

投稿者: 小早川医院

2013.05.25更新

腸は口から入った食物が通過していく管状の通り道ですが、単に「道」としての役割だけでなく、食物からのエネルギーや栄養素の吸収、外界からの異物の排除、さらにホルモンや神経系の調節などの機能を持ち合わせています。腸というと腸内細菌のバランスが注目されていましたが、近年、腸に関する概念が大きく変わりそうな機能や、栄養とのかかわりが数多く報告されています。

腸の働き① エネルギー源を得る
腸の役割は、第一に食物をエネルギーに効率よく変換するため、順序良く分解し、吸収しやすい形にしていくことです。ヒトの皮膚の表面積は畳1枚分であるのに対して、腸の表面積はテニスコート1枚分といわれ、食物を分解・吸収するためには大変な労力が必要とされることがわかります。
ヒトは生命を維持するために幅広い食物を栄養に変えられる(雑食)ように進化してきました。その進化の裏で、腸は様々な種類の食物をエネルギーに変えるための工夫を行っており、そのひとつに、自力では消化しきれない食物を分解してもらうための「細菌との共生」があります。

腸の働き② 外からの攻撃から身を守る
腸の役割でもう一つ重要なのは、外界の敵から身を守ることです。腸は外部から摂取した食物の通り道であることから、毒素を出す菌やウィルス、アレルゲンなどと直接接するわけです。大半の菌やウィルスは酸性の強い胃酸によって死滅しますが、それでも撃退できない場合には、小腸の腸管免疫が抗体を送り出し、病原菌に対応します。

投稿者: 小早川医院

2013.05.23更新

以前から地中海沿岸地域独特の食習慣である「地中海ダイエット=地中海食」が心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中など)の予防に有効であるという研究結果が数多く発表されています。今年4月、世界で最も権威ある医学雑誌の一つである New England Journal of Medicine 誌に、糖尿病、高血圧、喫煙、肥満など心血管疾患のリスクの高い集団での地中海食の効果を検討した論文が掲載されました。

これによると、オリーブオイルやナッツを用いた地中海食は、心筋梗塞、脳卒中のリスクを30%も低下させました。
7000人以上の人を対象にして厳密に行われた大規模な研究によって、このような素晴らしい結果が得られ、それが世界の超一流誌に掲載されたことに意義があると思います。

これを契機に、slow food への流れが一層加速することになるでしょう。

投稿者: 小早川医院

2013.05.22更新

従来は、血糖管理のためのHbA1cの指標として次のような5つの区分が設定されていました。

①優 6.2% 未満
②良 6.2~6.9%未満
③可(不十分) 6.9~7.4% 未満
④可(不良) 7.4~8.4% 未満
⑤不可 8.4% 以上

これに対し、6月1日から施行される新しい血糖管理基準では下記の様な3つのカテゴリーが設定され、HbA1cの目標値もきりの良い値にそろえられました。また、「優・良・可」という学校の通信簿の様な名称が消えて、患者さんにも受け入れられやすくなりました。

(1)血糖正常化を目指す際の目標 6.0%未満
(2)合併症予防のための目標 7.0%未満
(3)治療強化が困難な際の目標 8.0%未満

(1)は適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標値。(2)については対応する血糖値として、空腹時血糖値130mg/dl, 食後2時間の血糖値 180mg/dlがおおよその目安として付記されています。(3)は低血糖などにより治療の強化が難しい場合の目標です。

今回発表された新基準は、私のように糖質制限(低炭水化物)食を推進している医師にとっては、実際の臨床の場での感覚に近いものであり、良い方向に改訂されたと思います。
1日1食のみ炭水化物を抜く程度の無理のない糖質制限食と運動のみで治療している場合には、HbA1cは正常範囲を目指してよいと思います。しかし、2食、3食で炭水化物を抜くような厳しい糖質制限や多くの種類の糖尿病薬の併用療法でHbA1cの正常化を目指すのは低血糖や長期的な副作用(死亡率の上昇、発がんの増加、心血管疾患の増加など)の危険性が増すので、望ましくないでしょう。過去のデータを見ても、実際の臨床の現場でもHbA1c 7.0未満では神経障害、網膜症、腎症といった糖尿病合併症が進行する危険性は低いので、治療はHbA1cをこの範囲に保つのに必要な最低限の糖質制限、あるいは最低限の薬物治療にとどめるべきです。やみくもにHbA1cの正常化を目指すのは医者の自己満足でしかないと思います。

投稿者: 小早川医院

2013.05.21更新

最近注目されているビタミンDの欠乏が心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中など)による死亡のほか、がんや呼吸器疾患による死亡リスクとも強く関係しているとするドイツのグループの研究成果がAmerican Journal of Clinical Nutrition の最新号に掲載されました。

この研究によると、ビタミンD充足群(血中ビタミンD濃度 50 ng/ml以上)と比較して、欠乏群(30 ng/ml 未満)および不足群(30~50 ng/ml) の全死亡リスクはそれぞれ1.71倍、1.17倍と明らかに高くなっていました。また、充足群と比較して欠乏群の心血管死、がん死、呼吸器疾患死のリスクはそれぞれ1.39倍、1.42倍、2.50倍といずれも明らかに高くなっていました。

この結果から、ビタミンDは健康長寿に必須の栄養素であり、十分に紫外線を浴びることができない場合には、サプリメントとして摂取する必要があると言えるでしょう。

投稿者: 小早川医院

2013.05.10更新

今シーズンは、スギ、ヒノキの花粉の飛散量が昨年の6倍にも達し、花粉症の方にはつらいシーズンでした。花粉の飛散が速く始まった分、終息も早かったようで、4月下旬にはヒノキの飛散はほとんどなくなり、この時期に症状が消失した患者さんも多かったです。

しかし、それもつかの間、GW明けからは、再び症状が悪化して来院される患者さんが増えています。今度は、オオアワガエリ、カモガヤ、ハルガヤなどのイネ科植物の花粉が飛散しているようです。最近は、複数の花粉に反応する患者さんが増えていますので、症状が再発した方は、やはり抗ヒスタミン薬を地道に続ける必要があります。また、長期間症状の続くような方は、以前にお勧めした免疫調整サプリメントであるビタミンDを継続して服用されるのも良いでしょう。

投稿者: 小早川医院

2013.05.07更新

認知症の治療で最も問題になるのは介護者の疲弊です。介護者が燃え尽きてしまっては、介護・治療を続けることは不可能になります。認知機能の改善のみを重視する従来の治療法では、介護者の負担を軽くすることはできません。そこで、当院では名古屋フォレストクリニックの河野和彦先生が提唱されているコウノメソッドに従って治療を行っています。

認知症の症状の中で最も介護者を苦しめるのは不眠、易怒、過食、暴力、浪費、介護への抵抗などの陽性症状です。当院ではグラマリール、ウィンタミンなどの向精神薬や漢方薬(抑肝散など)を駆使して、こうした陽性症状を抑えることにより介護者の負担を軽減することを最優先しています。

その後に、患者さん本人を苦しめている認知機能の低下(もの忘れ)の治療に取り掛かります。治療薬としてはアリセプト、レミニール、リバスチグミン(貼り薬)、メマリー、サアミオン、シンメトレルなどを、患者さんの症状に応じてきめ細かく使い分けています。また、フェルガード、エグノリジンS、イチョウ葉エキスなどのサプリメントも必要に応じて使用しています。

このような治療により、介護者のストレスを最小限に抑えつつ、ご本人が人間としての尊厳を失わずに残された人生を送れるようになるのです。

投稿者: 小早川医院

  • 院長ブログ
  • スタッフブログ
  • 小早川医院 Facebook
  • 052-752-0800
  • メールでのお問い合わせ