院長ブログ

2016.01.13更新

今日は「糖尿病患者さんの低血糖と認知症の関係」というテーマの最終回です。さっそく3例目の実例をご紹介します。

71歳男性, 独居, 元工場労働者です。現役時代は非常にまじめで仕事熱心な方で、会社から表彰された事もあります。
2008年に心筋梗塞のため某病院でバイパス手術を受けた際、偶然2型糖尿病を指摘されました。退院後は、糖尿病専門のクリニックに通院していました。超速効型インスリンを朝食前4単位, 昼食前6単位, 夕食前6単位自己注射し、2種類のお薬を内服していましたが、インスリン注射は自主的に夕食前の6単位のみに減らした状態で2012年に当院に転医されました。「インスリン注射をしていると何となく体がだるく、お腹が空いて仕方がないのでやめたい」というのが当院にかわってこられた理由でした。初診時、HbA1c 6.2%, 食後1時間の血糖値 104mg/dl, 1,5AG17.5μg/mlとすべてが正常範囲内でした。患者さんの訴えておられる倦怠感や空腹感は低血糖が原因である可能性が高いと考え、インスリンを中止して内服薬の内、1種類も徐々に減らして中止としました。代わりに低血糖を起こしにくい別のお薬を内服してもらいました。この結果、倦怠感や空腹感は消失し、HbA1cは少し上がって6.5~7.0%になりました。「あなたのお歳ならHbA1cはこのくらいで十分ですよ」と説明して経過を見ていたところ、1年ほどしてHbA1cが急上昇し始め、数か月で8.5%に達しました。時を同じくして、執拗に夜中の頻尿を訴えるようになりました。泌尿器科を受診しても前立腺肥大など、特に頻尿の原因は見当たらないとのことでした。糖質制限の栄養指導も繰り返し行いましたが、甘いものが我慢できず、血糖コントロールはなかなか改善しませんでした。

2015年春、「父親が生まれて初めて万引きをしてしまった」と娘さんが信じられないという顔をして相談に来られました。認知症のテスト(長谷川式)をしてみたところ、25/30点と軽度の認知機能の障害が見られました。頭部のCTでは前頭葉と側頭葉の萎縮が年齢不相応に強いことがわかりました。これらを総合して「ピック病」と診断しました。

この方は明らかな低血糖発作はなかったものの、当院に転医する前に潜在的な低血糖状態を繰り返していたことは明らかです。この時の脳のダメージが3年後のピック病の発症の引き金になった可能性が高いと思います。

以上、3回にわたって低血糖が認知症発症の誘因になったと考えられる3例の実例をご紹介しました。
高齢者の糖尿病では自覚症状がはっきりしない低血糖が起こりやすいので、若い人よりも緩めに治療目標を設定すること、そして低血糖を起こしにくい治療法を選ぶことが重要です。





投稿者: 小早川医院


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