糖質制限食

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糖尿病治療の目標は?

糖尿病治療の目標は何でしょうか?
血糖値の変動をできるだけ正常なパターンに近づけることでしょうか?
HbA1cを正常範囲まで下げることでしょうか?
あるいは糖尿病の合併症を予防することでしょうか?

糖尿病は現状では治癒の難しい病気です。ほとんどの場合、一生病気と向き合って治療を続けていかなければなりません。とすれば、治療の目標は「血糖値をうまくコントロールしながら、人生を楽しみ、元気に長生きする」、つまり生活の質(QOL)を維持しつつ健康寿命を延ばすことにあるのではないでしょうか?

カロリー制限食の限界

糖尿病と診断されると、まず医者に言われることは、「糖尿病の治療の基本は一に食事療法、二に運動!」です。そして、この食事療法とは通常はカロリー制限食です。

例えば、身長170cm体重80kgのデスクワーク中心のサラリーマンでは、一日の摂取カロリーは1600kcal程度に抑えられ、そのうち60%を炭水化物で摂取し、脂肪は20%~25%以内に抑えるように指導されることが多いと思います。総カロリーを標準的な摂取カロリーより500kcal以上減らされたうえ、三大栄養素の中で最も腹もちが良く料理のうまみのもとになる脂肪を総カロリーの4分の1以内に制限されてしまうので、この食事では物足りなさを感じる人が圧倒的に多いのです。教育入院という形で入院している間は、病院から栄養指導の内容に沿った食事が提供されるので血糖コントロールはそれなりに改善するものの、退院してしばらくすると続けられなくなり、結局「元の木阿弥」というケースが多いのです。

しかも、たとえこのカロリー制限食を忠実に守ったとしても、食後の血糖値の上昇は十分には抑えられないのが現実です。

薬に依存している現在の糖尿病治療

しばらく食事療法を続けてもHbA1cが目標のレベルまで下がらないと、血糖を下げる飲み薬を使いましょうということになります。それでもだめなら、いよいよインスリン注射です。

ここ10年程の間に次々と糖尿病の新薬が開発され、インスリン製剤も随分とバリエーションが増えました。食事療法が実践できなくても、いろいろな薬物療法を組み合わせることでHbA1cを目標のレベルまで下げることができる例も多くなってきました。そのせいか、薬物療法を開始するタイミングが以前よりも早まっているようです。
「糖尿病治療の基本は食事療法」という言葉は形骸化し、食事療法の存在感がどんどん薄れてきています。

コストパフォーマンスの悪い現在の糖尿病治療

多くの薬を併用することにより医療費が増加し、患者さんの負担が増える(糖尿病の新薬は薬価が高い物が多いのです)という弊害も出てきています。経済的負担に耐えられずに治療を中断してしまう患者さんもいらっしゃいます。

Currieらの報告によれば、英国では1997年から10年間で11万人の2型糖尿病患者を積極的に薬物治療した結果、医療費が2倍以上に増加したにもかかわらず、HbA1cは0.1%しか改善しませんでした。費用対効果という点で、効率の良い治療が行われているとは言い難いですね。

糖尿病の薬でガンが増える?

一部の経口糖尿病薬やインスリン注射によってガンの発生率やガンによる死亡率が上昇したという報告が多くなってきています。薬物療法でHbA1cのコントロール目標を低く設定するほど死亡率が上昇するというデータもあります。

薬物療法でいくら血糖値やHbA1cの値が良くなっても、ガンなどの病気を併発して生活の質が低下したり、寿命が縮まっては意味がありません。

生活習慣病は生活習慣の改善でなおす!

2型糖尿病は生活習慣病です。ですから、その治療も生活習慣の改善が中心となるべきです。

「健康寿命を延ばす」という糖尿病治療本来の目標を達成するためには、もう一度原点に立ち返って、できるだけ薬に頼らずに食事療法で2型糖尿病をコントロールすることを真剣に考える時期が来ているのではないでしょうか。

2型糖尿病の食事療法に求められる条件とは

それでは「健康長寿」を実現するための糖尿病の食事療法はどうあるべきでしょうか?
そのカギはインスリンにあります。合併症を起こさない範囲に血糖や脂質をコントロールすると同時に、血液中のインスリン濃度をできるだけ低く保つことにより動脈硬化、発ガン、さらに老化を予防することが大切です。この点を考慮して、2型糖尿病の食事療法に求められる条件を挙げてみたいと思います。

  • ①食生活を楽しみつつ、ストレスなく長期に続けられる方法であること。
  • ②肥満が改善すること。
  • ③食後高血糖を起こさないこと
  • ④インスリン分泌をできる限り刺激しないこと。
  • ⑤糖尿病に合併する脂質異常症(血液中のLDL(悪玉)コレステロールの増加、中性脂肪の増加、HDL(善玉)コレステロールの減少)も同時に改善できること。
  • ⑥経済的負担が大きすぎないこと

従来のカロリー制限食はこのような視点からみると合理的な食事療法とは言えません。そこで、当院では糖質制限(低炭水化物)食をお勧めしています。この方法は、上に挙げた条件を完全に満たしているわけではありませんが、全ての項目でカロリー制限食よりも優れていると考えています。

糖質制限(低炭水化物)食とは

糖質制限(低炭水化物)食とは、カロリーを制限せず、糖質・炭水化物の摂取量を制限することにより、食後に血糖値や血液中のインスリン値が上昇することを防ぐ方法です。英語ではlow-carbohydrate diet と表現されるので、これを略して「ローカーボ食」という呼称もあります。

註:炭水化物=糖質+食物繊維

欧米では糖尿病や肥満、メタボリック症候群の食事療法として注目されており、多くの人々が実践しています。糖質制限(低炭水化物)食が従来のカロリー制限食よりも優れているという研究結果も多数報告されています。
日本では、2000年ごろに京都の高尾病院で糖尿病の糖質制限(低炭水化物)食による治療が始まりました。 2003年には春日井市の灰本クリニックでもこの治療法が導入され、めざましい成果をあげています。

当院では、当初は従来のカロリー制限食と薬物療法を組み合わせた糖尿病の治療を行なっていましたが、何種類もの薬を組み合わせて使っても血糖のコントロールができない方や、血糖のコントロールはできても肥満が解消せず、なかなか薬が減量できない方が多いという問題点がありました。この状況を打破するために、当院でも糖質制限(低炭水化物)食を導入し、非常に良い結果が得られています。患者さんに記録していただいた3日分の食事日記をもとに、管理栄養士が栄養分析を行い、その結果をもとに栄養指導を行っています。また、当ウェブサイトの「スタッフブログ」に糖質制限レシピを定期的にアップしていますので、ぜひご覧ください。

また、2011年3月には、愛知県下で糖質制限(低炭水化物)食を治療に導入している医療機関の医師、管理栄養士が中心となって「日本ローカーボ食研究会」が設立され、私も入会させていただきました。年2回の学術集会が開催され、適正な糖質制限食の普及を目指して活発な議論が交わされています。

現状のカロリー制限食に限界を感じておられる方、なかなか血糖のコントロールができない方、糖尿病の薬を減らしたい方、また糖尿病でなくても肥満やメタボリック症候群で悩んでおられる方は是非ご相談ください。

糖質制限(低炭水化物)食の原理

血液中のブドウ糖の濃度を血糖値と言います。
糖質・炭水化物は最終的には酵素で分解され、ブドウ糖となって小腸から吸収されます。このため、糖質・炭水化物を摂取すると血糖値が上がります。一方、脂質やタンパク質は血糖値をほとんど上げません。これが、糖質制限(低炭水化物)食で食後の血糖が良好にコントロールされる原理です。
さらに、糖質・炭水化物を摂取して血糖値が上昇すると、それに反応して血液中のインスリンの濃度も上昇します。インスリンは血糖値を下げると同時に余分な糖分を脂肪にかえて体の中に蓄積させるように働きます。糖質制限(低炭水化物)食ではこうしたインスリンの反応が抑えられるので、脂肪が蓄積しにくくなるわけです。

糖質制限(低炭水化物)食の実際

  • 1まず、糖尿病の重症度によってどの程度糖質・炭水化物を制限するかを決めます。

    そして、主食をはじめとして糖質・炭水化物の多い食品を減らすことにより、糖質・炭水化物の摂取量を調節します。
    糖質・炭水化物制限の厳しさは%-炭水化物(%C)すなわち総摂取カロリーに対する糖質・炭水化物由来のカロリーの割合(%)で表します。

    HbA1c ≦ 8.9 1食のみ糖質・炭水化物の多い食品を抜く %C≒40~45%
    HbA1c 9.0~11.9 2食で糖質・炭水化物の多い食品を抜く(朝・夕または昼・夕) %C≒30~35%
    HbA1c ≧ 12.0 3食とも糖質・炭水化物の多い食品を抜く %C≒15~20%
  • 2糖質・炭水化物を減らした分、脂質、タンパク質の摂取量を増やし、満足感を得る。

  • 3カロリー制限はしない。

  • 4蒸留酒や辛口のワイン・日本酒など、糖質・炭水化物の含有量の少ない酒は制限しない。

このように、糖質制限(低炭水化物)食は糖質・炭水化物のみを制限し、脂肪やタンパク質は制限しないという単純な食事療法で、カロリー計算は必要ありません。

糖質制限(低炭水化物)食の利点

ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食を従来のカロリー制限食と比べた時の利点をまとめると次のようになります。

  • 食後の血糖値がほとんど上がらない。したがって、インスリンも分泌されない。その結果糖尿病を食事で治療できる。
  • 体重が減る。
  • 血液中の中性脂肪を下げる。LDL(悪玉)コレステロールも若干下がる場合が多い。
  • HDL(善玉)コレステロールは少し上昇する。

以上のことから、ローカーボ(糖質制限、低炭水化物)食は糖尿病だけでなく、メタボリック症候群全般に効果があるといえます。さらに、長い目で見ると、動脈硬化の進行を防ぐ効果が期待されます。

どこまで炭水化物を制限するか?

最近、健康雑誌や書籍などで、非常に厳しい糖質制限(3食とも炭水化物を抜く)を推奨し、「そのかわりにステーキを腹いっぱい食べても大丈夫」などと述べている記事を見かけます。これを盲信することは大きな危険をはらんでいます。なぜなら、欧米の大規模研究で、糖質制限を厳しくすればするほど総死亡、ガンによる死亡、心血管病(脳卒中や心筋梗塞)による死亡が増加するというデータが次々と報告されているからです。

一方、ハーバード大学の大規模研究によれば、「動物性脂肪・タンパク質を中心とした糖質制限食では総死亡、脳卒中や心臓病による死亡、およびガンによる死亡が増加したが、植物性脂肪・タンパク質を中心とした糖質制限食では総死亡、脳卒中や心臓病による死亡は減少し、ガンによる死亡については差がなかった」という結果が得られています。

これらの研究成果は、糖質制限(低炭水化物)食のやり方を誤ると血糖は下がるがかえって寿命が縮まってしまうという結果になりかねないことを示しています。同時に、植物性脂肪・タンパク質を中心とした緩やかなローカーボ食は安全であることも示唆しています。私は、3食の内1食のみ炭水化物を除去する程度の緩やかなローカーボ食が最も安全であると考えています。3食とも炭水化物を除去するという厳しい制限は、HbA1cが12%を超えているような重症の糖尿病の場合に、数か月以内の短期間に限って行うべきです。

炭水化物を減らしてどのタイプの脂肪に置き換えるべきか?

糖質制限(低炭水化物)食は、エネルギー源を部分的に炭水化物から脂肪へ転換することでもあります。
脂肪は飽和脂肪酸、単価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸の3種類の脂肪酸から構成されています。食品によりこれら3種の脂肪酸の比率が異なります。

ハーバード大学の研究者たちは、様々な栄養素と脳卒中や狭心症・心筋梗塞による死亡との関係を追跡調査しています。その結果、最も死亡を増やすのは炭水化物であり、それを脂肪で置き換える場合、多価不飽和脂肪酸が最も死亡を減らし、2番目が単価不飽和脂肪酸、3番目が飽和脂肪酸であることが科学的に証明されました。ただし、これはあくまでも脳卒中、狭心症・心筋梗塞による死亡に関する研究成果であり、日本人の死因のトップであるガンに関してはどのような影響があるのかはわかっていません。

現状では糖質制限(低炭水化物)食の脂肪の構成は多価不飽和脂肪酸>単価不飽和脂肪酸>飽和脂肪酸となるようにして、一方でガンによる死亡を増やすことが明らかになった赤肉の摂取量を抑えるのが最も安全な方法でしょう。

健康長寿に役立つ糖質制限(低炭水化物)食とは?

ここまで読んでいただいた方は糖質制限(低炭水化物)食を実践する際に動物性脂肪・タンパク質に偏ったり、赤肉(豚肉、牛肉、羊肉など)の摂取量が増加するのは危険であることがわかっていただけたと思います。このような「ひずみ」を生じないように糖質制限食を実践するにはどうしたらよいでしょうか?私は有名な「地中海ダイエット」の中にこの問題を解決するヒントがあると考えています。

地中海ダイエットとは、昔から長寿の人が多いことで知られていた地中海沿岸地域の伝統的な食事スタイルです。
野菜、果物、ナッツ類、豆類、精製度の低い穀物(全粒分のパン・パスタなど)を多く摂取し、魚、鶏肉、乳製品を中等量摂取し、適量のワインを食事とともに摂取します。赤肉、卵の摂取は減らします。オリーブオイルを主要な油脂として日常的に使用します。

地中海ダイエットが狭心症、心筋梗塞、脳卒中の予防に有効であったという論文がイタリア、フランス、スペインなどから数多く出されています。2008年にはイタリアの研究者たちによって、「地中海ダイエットを忠実に実践すると、総死亡、心臓病や脳卒中による死亡、ガンになるリスク、ガンによる死亡、パーキンソン病とアルツハイマー病にかかるリスクが全て低下する」という157万人もの人を対象にした大規模研究の結果が発表されました。

これらの結果から、地中海ダイエットの考え方を採り入れれば、植物性脂肪・タンパク質を軸とした理想的な糖質制限食が実現できると考えられます。ただし、地中海ダイエットでは果物や精製度の低い穀物など、炭水化物の摂取量が多くなる(総カロリーの50~60%)ので、糖質制限食とするためにはこれらを減らし、その分脂肪、タンパク質を増やさなければなりません。ここで、赤肉(牛肉、豚肉、羊肉など)を増やしてしまったのでは地中海ダイエットの良さが失われますし、発ガンの問題が出てくるかもしれません。やはり植物性脂肪・タンパク質を主体に増やし、後は魚、鶏肉、の摂取量も若干増やしていくというやり方が良いでしょう。

伝統的日本食に基づいた日本式糖質制限(低炭水化物)食の提案

さて、このような地中海ダイエットの考え方に沿った糖質制限(低炭水化物)食を日本で実践するには現実的にどのようにしたらよいでしょうか?

まず、主要な油脂がオリーブオイルという点は抵抗のある方も多いと思います。そこで、加熱用の油脂として菜種油、大豆油、紅花油、ごま油を用います。また、非加熱用(ドレッシング、調味料)としては多価不飽和脂肪酸の含有量が多いえごま油(シソ油)や亜麻仁油が良いでしょう(これらは100℃以上で変性しやすいので、加熱用には適しません)。

植物性脂肪・タンパク質を増やすには大豆製品(納豆、豆腐、あげ、豆乳、ゆば、おからなど)がお勧めです。中でも豆腐は、冷奴や湯豆腐にすれば肉料理などの濃い味や脂気を中和することができ、主食の代わりになりうる食品です。大豆製品にはリノール酸、αリノレン酸などの多価不飽和脂肪酸が豊富に含まrています。また、胡桃、落花生などのナッツ類やごまも日本で比較的手に入りやすく、良質な植物性脂肪・タンパク質を豊富に含んでいます。

さらに脂の乗った魚、鶏肉、野菜を積極的にメニューに加え、赤肉・加工肉を減らすようにすれば日本式糖質制限食が完成します。

この方法は、嗜好の問題もあり、通常の食事よりもコストがかかるので、最初から全ての患者さんに適用するのは無理があります。糖質制限のスタートの時点ではとにかく炭水化物を目標レベルまで減らし、その分脂質・タンパク質(動物性・植物性にこだわらない)を増やして、食事の満足感を得ながら血糖が下がっていくという治療効果を実感できることが大切です。糖質制限が身についてきたところで、植物性脂肪・タンパク質の摂取量を意識的に増加させ、使用する油脂にもこだわって、徐々に洗練された糖質制限食を完成させていけばよいでしょう。

このレベルに到達すれば、糖質制限食は単に糖尿病の治療食にとどまらず、一生を通じて実践できる健康長寿のための食習慣であると言えます。治療効果が出て、糖尿病薬の量や種類が減り、通院回数や検査の頻度も減っていけば、食事のコストの増加分は医療費の減少分で十分に相殺できるでしょう。

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